「フェイクニュース王におれはなる!」 SNSの力で「次のメキシコ大統領を選ぶ」と豪語

    カルロス・メルロ氏の作ったデジタル・マーケティング会社は、無数のボットと数え切れないほどのFacebookページを武器に、フェイクニュースでメキシコ政界を乗っ取ろうとしている。

    メキシコシティ発 — ハッシュタグ「#GanaConVictoryLab」を含む一連のツイートは、6月15日午後6時ごろ投稿され始めた。それから2時間もしないうちに、そのハッシュタグはメキシコのTwitterで注目の話題として順位を上げ始めた。

    午後8時には、サッカーのワールドカップでポルトガルのクリスティアーノ・ロナルド選手が同じころ見せたハットトリックの大活躍に関するツイートを押しのけ、メキシコで4番目に多くツイートされたハッシュタグとなった。

    この状況を手放しで歓迎できない点が、1つだけある。ハッシュタグをツイートしたTwitterアカウントが、1つ残らず偽物だったのだ。

    メキシコのデジタル・マーケティング会社、Victory Labが作った「Victory Labで勝利を手にしよう」という意味のハッシュタグ#GanaConVictoryLabは、メキシコのソーシャルメディアに対して同社がどれほどの影響力を持つかをBuzzFeed Newsに示すためのものだった。

    Victory Labを創業者である29歳のカルロス・メルロ氏は、偽アカウントがそのハッシュタグ入りツイートを自動投稿し始めると、得意げにオフィスの大きなモニターを背にして立った。

    メルロ氏は、投稿用ツイートの書かれたスプレッドシート画面を巨大モニター脇にある自分のノートPCでスクロールしながら、「ここにいるスタッフが、全ツイートのテキストを(Microsoft)Excelで書いている」と話した。「これをあるソフトへ送ると、ツイートして、ツイートして、ツイートしまくる処理が走り出す」(同氏)

    そのソフトはメルロ氏のTwitter用ボットをコントロールしていて、ツイート数が多いほかの話題の投稿頻度を解析し、同様の頻度で投稿を実行する。

    「ソフトは、クリスティアーノ・ロナルド関連の投稿と似たこのハッシュタグのように、話題のハッシュタグを模倣する。話題になっているほかのトピックをまねるのだ」(同氏)

    メルロ氏のVictory Labという会社は、Facebookでユーザー8700万人の個人情報を不正に取得した英国企業Cambridge Analytica(ケンブリッジ・アナリティカ)のメキシコ版に相当するマーケティング会社だ。

    同様の会社は数百社あると見られ、メキシコのソーシャルメディアをゴミ情報であふれさせ続けている。そしてVictory Labは、任意のソーシャルメディアでどのような話題でもトレンド入りさせる業務を有料で請け負う。

    同氏によると、BuzzFeed Newsに実演したようなハッシュタグをトレンドのトップに掲載したいのなら、約1万ドル(約111万円)かかる。

    Twitterのトレンド掲載場所は正規の宣伝コーナーとして販売されているが、メルロ氏はVictory Labを類似サービスの低価格版と考える。「企業がTwitterと契約してトレンドを宣伝に使おうとすると、10万ドル(約1110万円)かかる」(同氏)

    メルロ氏は、この半年間に限ると、Victory Labの主な取引相手は企業でなく政治家だったとした。そうした政治家たちの最終目的は、メキシコの歴史的な同日選挙に向けてソーシャルメディアを支配することらしい。

    メキシコでは7月1日に新たな大統領に加え、連邦議会の下院議員500人、上院議員128人、州知事や市町村長、地方自治体の議員など数千人を選ぶ選挙が実施された。Victory Labの実行する選挙キャンペーンは、FacebookやTwitterから抑え込まれていないそうだ。

    立候補した政治家たちは、Victory Labを利用すればあらゆる方法でデジタル・コンテンツを操作できるし、ほとんど取り締まられないことを知っているという。

    BuzzFeed Newsが問い合わせたところ、Facebookは6月28日にメルロ氏個人とVictory LabのFacebookページを閉鎖した。

    ただし、メルロ氏のボット・ネットワークと、Victory Labが運営している大量のフェイクニュース用Facebookページは健在なままだ。同氏はBuzzFeed Newsに対して、両ページの閉鎖はFacebookによる検閲の結果だろう、と述べた。

    BuzzFeed Newsが初の取材で訪れた際、メルロ氏は、メキシコの政治家から依頼されたフェイクニュース、ダーク広告(広告主が隠された政治的な広告)、話題のトレンド化を進める事業に存在する唯一の現実的な障害として、期限までの支払いを政府職員に守らせることを挙げた。

    「代金を支払わせるのは難しい。100万件ツイートするのはたやすいが、売上金の回収は難しい」(同氏)

    ある意味、メキシコのインターネット文化は以前から、拡散性の高い詐欺と偽情報で構成されていた。米国の人々は2016年11月、大統領選挙がソーシャルメディアに影響されていたと知ってようやく問題を認識したのに対し、メキシコ社会ではインターネットが使えるようになって以降、こうした状況が当たり前であり続けた。

    メキシコは、メディアと公共機関に寄せられる信頼が世界で最低ランクの国だ。ある最近の調査によると、メキシコ人の80%が日々の生活がフェイクニュースから大きな影響を受けている、と考えていた。

    メキシコの大手デジタル・マーケティング会社のある社員は、勤め先の会社が政治家と取引していると企業顧客に知られたくないことから、匿名を条件に、メキシコの政治家は1990年代終わりからダーク広告とフェイクニュースを利用し続けている、とBuzzFeed Newsに話してくれた。

    メルロ氏の推測だと、このところメキシコでトレンド掲載される話題の約9割が、デジタル・マーケティング会社に操られている。それでも、メキシコの現状は米国の後追いに過ぎないという。メキシコのデジタル・マーケティング会社は、米国を偽情報の世界的中心地と見なしているのだ。

    「偽情報の世界では、アメリカが王様だ。株式会社アメリカより恐ろしいものなど存在しないだろう。悪質なキャンペーンの規模は大きくなっていく。フェイクニュースは巨大になりつつある。そうなっても、誰も気にしない」(メルロ氏)

    メキシコの捜査当局は、ネット空間の偽情報を、メキシコシティのサイバー犯罪捜査部門が真剣に取り組むべき問題になった、と腹をくくった。メキシコシティ公安委員会のサイバー犯罪対策班は、メキシコ政府の規制する政治的なダーク広告に寄せられる苦情を、綿密に監視している。

    ところが、サイバー犯罪対策班ディレクターのジュアン・カルロス・モンテシノス氏はBuzzFeed Newsに、広まっていた選挙関連フェイクニュースを9カ月にわたって調査したものの、1件の逮捕にもつながらなかった、と述べた。

    メルロ氏は、このような環境に長いこと身を置いている。彼の歩んできたキャリアは、現実から極端に乖離したメキシコのウェブ文化そのものだ。

    そのキャリアは、音楽系に強かったSNSのMyspaceでメキシコのロックバンド「モロトフ」の非公式ページを開設した2006年に始まる。2009年には、このMyspaceアカウントがメキシコでもっともフォロー数の多いページになったという。

    「コンサートの写真やコンサートの開催予定を投稿するようにしていた。そうしているうちに、2009年にモロトフから『金を払うから投稿してくれ』という連絡をもらった。『コミュニティ・マネージャー』なんて言葉が生まれるより前に、モロトフのコミュニティ・マネージャーだったんだ」(メルロ氏)

    メルロ氏は、ある政治家がTwitterでインターネット活用を手伝ってほしいと呼びかけたのに応え、2011年にVictory Labを創業した(メルロ氏はその政治家の名前を明かそうとしない。また、メルロ氏の当時のTwitterを調べたが、その政治家に結びつくヒントは得られなかった)。

    「そのころのオフィスは友人6人と共同生活していたアパートだったが、その政治家はそこに来て、一緒にやらないかと誘ってくれた」(同氏)

    Victory Labが初めてバイラル・マーケティングを成功させたのは、能力の検証目的で、2013年に交通事故死した俳優のポール・ウォーカー氏が実はまだ生きている、というフェイクニュースを広めた2014年のことだったという。

    「大勢がこの話を信じた。600万人だよ」と話すメルロ氏は、これをVictory Lab初の大スクープと称している。ところが、ドナルド・トランプ氏の大統領選挙キャンペーンは、Victory Labに対する考え方を一変させてしまった。

    「米国で展開された選挙キャンペーンをつぶさに調べ、トランプ氏陣営の使ったツールに心を奪われ、同じようなことを実行しようと決心した」メルロ氏であるものの、ケンブリッジ・アナリティカのような企業が英国のEU離脱(ブレグジット)などで展開したキャンペーンを気に入っている、と発言することには及び腰である。ただ単に、そうした見解など現時点では賛同を得られないだろうと感じているからだ。

    「ケンブリッジ・アナリティカの活動は気に入っているけれど……」と尻すぼみになったメルロ氏は、「ケンブリッジ・アナリティカが好きだと発言することは、ヒトラーを好きだと話すようなものだ」と述べた。

    ケンブリッジ・アナリティカの実施したキャンペーン同様、Victory Labのネットワークが実際にどれだけの効果を発揮したかは定かでない。それに、メルロ氏はためらいもせず、フェイクニュースで強い政治的効果を及ぼすのに必要なオンライン環境がメキシコには単純に不足している、と認めた。

    同氏のこうした態度は、Victory Labが実行している巧妙な操作の具体的な特性を、覆い隠している。Victory Labの価格やサービス、使っているツールについて同氏から言質を取ることは、さらに難しい。

    BuzzFeed Newsはメルロ氏の主張を1つ1つ検証しようとしたが、Victory Labが実際にどの程度の範囲まで影響するのかすら真偽を確認できなかった。しかし、同氏の話は、メキシコにある複数の似たようなデジタル・マーケティング会社から得られた情報と一致している。

    ただし、Victory Labsの商売は順調らしい。メルロ氏は、3回行われた大統領選挙の討論会に毎回出席した。メルロ氏夫妻は、メキシコのメリダで開催された3回目の討論会へプライベート・ジェット機で向かった。当初BuzzFeed Newsは同行を打診されていたが、メルロ氏は関係者を心配させるということで申し出をすぐに撤回した。

    メルロ氏によると、現時点でVictory Labは17の小規模なオフィスをメキシコ各地に展開し、それぞれ15人から20人の若者を使っているという。BuzzFeed Newsがメルロ氏から訪問を許された「オフィス」は、メキシコシティ南部のモデルナ近郊にある、ほとんど装飾されていないとても小さなアパートだった。

    作業部屋では20代の若者10人強が真新しいノートPCにかじりつき、別の部屋にはPCの空き箱が詰め込まれていた。そして、拡散性の高いミームと呼ばれるコンテンツを作り、FacebookとTwitterへの投稿タイミングを調整していた。

    どうやら、スタッフは十分な報酬を与えられているようだ。インタビュー中に外注先から荷物が届き、全員に給与として小切手が渡されていた。スタッフは大学を卒業したばかりの手っ取り早く稼ぎたい若者たちで、メルロ氏は彼らを取っ替え引っ替えしている、とした。

    「彼らはミレニアル世代で、5カ月働いて実家に帰り、両親に『まったく、いいように利用された』と話すんだ。そこでスタッフを入れ替える。こうして、常に人が出入りしている」(同氏)

    Victory Labが手がけてきた政治関連のフェイクニュースは、いずれもメキシコの政党から請け負ったものばかりだ。それは独立系候補のハイメ・ロドリゲス・カルデロン氏から依頼されていない意味か、と質問したら、メルロ氏は笑って頷いた(大統領選挙でリードしている国家再生運動(Morena)の党首は、BuzzFeed Newsに対し、自分自身も選挙チームも「私の知っている」メルロ氏と関係していない、と述べた。別の主要政党である制度的革命党(PRI)と国民行動党(PAN)にもコメントを求めたが、いずれの広報担当者からも反応を得られていない)。

    メルロ氏が「ここでミームを作っている」と指さした先にある大きなモニターの前では、若い女性がミーム画像にスペイン語の文章を重ねる編集作業をしていた。あるPCの脇には、Victory Labブランド付きマウスパッドが置いてある。マウスパッドにはスリムに加工されたメルロ氏の写真がプリントされており、メルロ氏は「フォトショップでいじったんだ」と笑った。

    メルロ氏によると、Victory Labが運営しているTwitterアカウントは400万個あり、その多くはロシアのボット販売業者から購入したもので、ユーザー名をメキシコ風の名前に変えたそうだ。

    「ロシアではアカウントの大量作成が簡単だ。メキシコのマーケティング会社は、例外なくロシアから買ったボットを使っている。ここにあるアカウントには、ロシア人の名前が付いていた。購入時の支払いは、すべてPayPalで済ませられる。値段は1アカウント25セント(約28円)だ」(メルロ氏)

    メキシコ大統領選挙に関する一連の討論会のうち、6月に行われた最終回の開催中、Victory Labが約100万個のツイートを投稿したとメルロ氏は見積もっている。Twitterの広報担当者はBuzzFeed Newsに対し、メキシコの選挙に関するトレンドとやり取りの急激な増加をしっかり監視している、とした。

    「あらゆるユーザーとサービスにとって、Twitterが健全な市民の意見交換と活動への参加を推進する安全かつ信頼できる場であるよう、見守る責任が当社にある。悪意にもとづいて活動する人々と、悪質な自動処理や操作を目的としたネットワークからTwitterを守るため、今後も努力を続ける」(Twitterの広報担当者)

    メルロ氏によると、Victory Labでは、競合している複数の候補者用にフェイクニュースを並行して作ることなど珍しくない。また、「対立候補が悪評を広めようとしている」と非難できるよう、ある候補者が自分に不利なフェイクニュースをわざと流すよう求める例もよくあるという。

    Victory Labのネットワークが真の力を発揮するのは、Twitter上で展開するキャンペーンでなく、Facebookでの活動だ。

    Facebookはこの6カ月間フェイクニュース撲滅に取り組んで来たものの、Victory Labが影響を及ぼせる範囲に何も変化はない、とメルロ氏は話す。Victory Labは、フォロワーが何百万人もいるようなフェイクニュース・サイトを作ろうとするのでなく、はるかに狡猾な方法を採用してきた。

    地元の新聞社が運営しているように見える4000個のFacebookページを、ネットワークとして運営しているのだ。各ページには、たとえば「おはようカンペチェ」といった具合の、地方新聞社のように聞こえる名前を付ける。そのうえで、こうしたフェイク地域ニュース用ページに、少人数だが熱心な読者をファンとして獲得する。

    「2011年にこのような新聞のFacebookページを作った。我々が100万ペソ(約600万円)つぎ込んで宣伝したフェイクニュースはFacebookに削除されてしまうけれど、ページが一掃されることはない」(メルロ氏)

    Facebookの広報担当者は、メキシコの選挙期間中「最新技術と機械学習に加え、人間による確認」を組み合わせて、偽情報に対策してきた、とした。

    12月に大学を卒業した22歳のルイス氏は、名字を明かさない条件でBuzzFeed Newsに話してくれた。大切なのは、Victory Labの作ったFacebookページを本物の新聞社が運営しているものと信じる読者を獲得することだそうだ。「どのような記事を読みたいか、読者に聞いてみる。カンクンのような街にいる読者は、近くにあるビーチの情報を読みたがる。ベラクルスの安全について何か知りたい読者もいる。いずれにしろ、そうした情報が読者にとって重要だ。そこで、そんな情報を発信すると、その新聞社のページを受け入れてくれる」(同氏)

    Victory Labは何年もかけてこれらのページを構築したことで、人知れず偽情報をネットワーク全体へ流せるようになった。メルロ氏は、Facebookの監視員がこの種の行為に気付くことなどない、と確信している。

    「それまで当たり障りのないように(Facebookページを)運営してきたので、掲載される情報に偏りがないと受け取られる」(ルイス氏)。ルイス氏は、行ったこともない街のローカルニュースを、Wikipediaの情報を参考にして書く。ルイス氏もメルロ氏も、迷子のペット情報を共有したり、定期的に天気の情報を投稿したりすることが、その地方のフォロワー獲得につながる、という意見で一致した。

    ルイス氏がVictory Labに入った切っ掛けは、「選挙キャンペーンに携わりたいなら、一緒に働こう」とだけ書かれた広告を目にしたことだ。政治アナリストのキャリアを積む第一歩としてメルロ氏の下で働くことが役立つと確信しているルイス氏は、明からさまな嘘は誇張ほどには通用しない、ということを学んだとも話す。

    「人々の感情をいじるのなら、何かを感じさせる物語や誇張を作り出した方がはるかにうまくいく」(ルイス氏)

    メルロ氏は、フェイクニュース共有の根本的な原因が読み手のミスにある、という意見に賛成している。「ニュースを読んだ時点で少しでも調べれば、偽情報だと分かって共有をやめる。ところが、調べもしないでシェアしてしまう。みんなシェアをしたがるんだ。注目されることを渇望していて、僕らの書くニュースが注目の材料になるのならば、みんな気にせずシェアする」(同氏)

    BuzzFeed Newsによるインタビューのなかで、メルロ氏はInstagramの操作も始めている、と話した。同氏が記者たちの写真をInstagramに投稿すると、15分間で1万5000個もの「いいね!」を獲得したのだが、そのほとんどが偽アカウントからのものだった。記事執筆時点で、「いいね!」数は4万を超えている。

    もっとも、現在Victory Labは100%の力を発揮できているわけでない。どんなによいデータが得られて、運営しているネットワークがFacebookにどんなに深く入り込み、どんなに多くのボットを動かせたとしても、伝統的なメキシコの汚職まみれの政治システムに対抗できると思えない、というのだ。メルロ氏にとって、それが最大の不満だという。

    「メキシコはアメリカと違う。インターネットが普及していない。ビッグデータは利用できるし、人々の望みは分かる。インターネットでどんな大仕事ができるかも知っている。ところが、ほかの政党には100万ペソの資金があり、諜報活動用データはまったく歯が立たない」(メルロ氏)

    米シンクタンクAtlantic CouncilのDigital Forensic Research Lab(DFRLab)は先日公開した調査レポートで、Victory LabのFacebookネットワークをメキシコ政治と同じく詐欺的な可能性がある、とした。各ページに対する「いいね!」の大半は、メキシコ国外で登録されたプロフィールのアカウントから付けられていて、Victory Labのコントロール下にあると考えられる。

    今や削除されて存在しないVictory LabのFacebookページは、報道メディアによるメルロ氏のインタビュー情報をシェアしていた。DFRLabがこのページの活動を分析したところ、インタビュー情報のシェアは、例外なくエンゲージメントを大量に獲得していた。ところが、メキシコ国内からのエンゲージメントは1つもなかった。

    「メキシコのフェイクニュース起業家のスペイン語で書かれたインタビュー記事に、アジアのFacebookユーザーが3000人以上も単純に『いいね!』している。この現象に納得のいく説明ができない。さらに、メキシコを主力市場とするメキシコのフェイクニュース企業が、アジア系の人のプロフィール情報が掲載された数千個もの偽アカウントを使っていることも、説明できない」(DFRLabのレポート

    これはつまり、Victory LabがメキシコのFacebookユーザーを騙そうとしただけでなく、政治家がフェイクニュースをばらまく目的でVictory Labと契約した、ということだ。

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    Victory LabがFacebookページ、Twitterボット群、Instagramの「いいね!」で実社会にどれほどの影響を与えたかと無関係に、メキシコでのフェイクニュースとの戦いは、この問題を真剣に受け止めているジャーナリストたちのあいだに新たな波を起こした。今回の選挙戦は、Verificadoと名乗るジャーナリスト集団から集中的に監視されている。Verificadoは、政治家を対象とした息詰まるファクトチェックや、拡散性の高い話題の正体を暴く取り組みを通じ、高い信頼を獲得してきたグループだ。

    ただし、メキシコのソーシャルメディアはベルサイユ宮殿にある光を繰り返し反射し続ける「鏡の間」と似ていて、Verificadoのようなジャーナリストが我々の偽情報を調べて正体を暴いたり、操作したトレンドに対する注意を呼びかけたりしても、偽情報がさらに多くの人の話題に上るだけだ、とメルロ氏は確信している。そして、Victory Labが採用している操作方法を説明しつつ、こうした記事はどんなものでも最終的に同じ結果に至る、と主張した。表ではVictory Labを非難しても、結局は裏で助けを求めるのだと。

    「偽アカウントでなく、実在するユーザーがフェイクニュースを目にすると、シェアする動きに参加し始める。生身の人間が情報を広めてくれる」(メルロ氏)

    現在29歳のメルロ氏は、自分がこの業界デジタル・マーケティング業界で歳を取りすぎたと認識している。引退してレストランを開き、子どもを持ちたいと願っているそうだ。ただし、メキシコで次の選挙が行われる6年後まではこの仕事を続けるだろう、と考えている。

    「次の大統領を選んでから引退するよ」(メルロ氏)


    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:佐藤信彦 / 編集:BuzzFeed Japan