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NHK中国語版が「日本新型コロナウイルス」と報じた→誤り。国会議員らが指摘したが…

漫画家の孫向文氏が「日本新型コロナウイルスと呼称している」とTwitter(3月10日)で指摘したほか、自民党の山田宏参議院議員も「とんでもないですね。対応します」とツイート(3月11日)していた。

「天下のNHKの中国語版が『日本新型コロナウイルス 』と呼称している」などという情報が一時、ネット上に広がった。

「日本新冠病毒疫情匯総」という中国語の前半部分に関する指摘だが、これは「日本における新型コロナウイルスの感染状況まとめ」という意味で、誤りだ。

BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。

拡散しているのは、NHK worldのホームページに掲載されていた情報だ。「日本新冠病毒疫情匯総」と書かれているページには、中国語のニュース動画が掲載されている。

この点について、漫画家の孫向文氏が「日本新型コロナウイルスと呼称している」とTwitter(3月10日)で指摘したほか、自民党の山田宏参議院議員も「とんでもないですね。対応します」がツイート(3月11日)。

前者は7500以上、後者は9000以上リツイートされるなど、拡散。ネット上では「最低やなNHK!」「厳重に抗議して頂きたいです!」などという反応が広がった。また、まとめサイト「Share News Japan」も山田議員の指摘を引用して記事化している。

ただ、これは誤りだ。「日本新冠病毒疫情匯総」は和訳すると「日本における新型コロナウイルスの感染状況まとめ」という意味になる。

NHKもBuzzFeed Newsの取材に対し、「日本新型コロナウイルスという呼称を意味するものではありません。このニュースは中国語を母語とする人を主な対象としたもので、誤解を受ける恐れはないと考えています」と回答。

「ニュースをお読みいただくと、『日本における新型コロナウイルスの感染状況まとめ』という意味であることをご理解いただけるかと思います。また、中国やイタリアなどでの状況を伝えるニュースでも『(国名)新冠…』という文言を用いています」と指摘した。

山田議員はその後Twitterで、NHKに問い合わせをしたと報告。「将来『日本新冠病毒』だけが切り取られる恐れもあるという皆さんのご意見もあるので、今後注意しておきます」などと述べた。

「中国が日本肺炎と呼ぼうとしている」

この問題をめぐっては、中国大使館のホームページにも同様に「日本新型冠状病毒肺炎疫情不断变化」という表記があることに関する指摘がネット番組「虎ノ門ニュース」などにより広がり、「中国が日本肺炎と呼ぼうとしている」などという憶測にまで発展した。

これもNHKの表現と同様「日本での新型コロナウイルスの感染状況が、絶え間なく変化している」という意味だ。この際は、中国大使館も公式に否定したが「曖昧な表現」「50年後にすり替えられる」などという声も上がっていた。

なお山田議員は新型コロナウイルスについて「武漢肺炎」との呼び方を用いていると、国会で主張している。また、麻生太郎財務大臣も「新型とかついているが、武漢ウイルスというのが正確な名前なんだと思う」と発言した。

しかし、特定の地名と感染症を結びつけることは差別にもつながりかねない。

実際、WHOも2015年に出した疾病の名称決定に関するガイドラインで、「貿易、旅行、観光、動物、福祉に及ぼす不必要な悪影響を最小限に抑え、文化的、社会的、国家的、地域的、職業的、民族的グループへの攻撃を回避する」必要があるとして、以下のような情報を含まないようにと定めている。

  • 町や国、地域、大陸
  • 人名
  • 動物や食べ物
  • 文化、集団、産業または職業
  • 過度な恐怖をあおる用語


こうした背景からも今回の新型コロナウイルス感染症には「COVID-19」という名称が決められている。悪いのはウイルスであり、決して特定の国や地域に住んでいる人たちではない。改めてそうした認識を持つことが大切だ。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。

また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。

  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。