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HPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す議員連盟が発足 「政治が動かさなければ子どもたちの命や子宮が守れない」

自民党がHPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す議員連盟を発足させ、積極的勧奨の再開のほか、9価ワクチンの承認、接種後に体調不良を起こした人の治療や補償体制の充実を目標として掲げました。

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐHPVワクチン。

2013年4月から小学6年生から高校1年生の女子は公費で受けられる定期接種となったが、接種後に体調不良を訴える声が相次ぎ、対象者に個別にお知らせを送る「積極的勧奨」を国が差し控える決定をしてから6年半が経った。

このワクチンの存在や自分が対象者であることさえ知らず、3回で5万円するワクチンを自己負担なしで受けられる期間を逃している女子が多いと見られ、接種率は1%未満まで落ち込んでいる。そして、子宮頸がんは増え続けている。

この間、安全性や効果を示す研究は十分積み重なったとして、自民党は11月26日、「HPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す勉強会」を開き、議員連盟を発足させた。

会長の細田博之・衆院議員は、「国民世論を喚起して、子宮頸がんにかかる人を減らすことは大事だ」と、活発な議論を呼びかけた。

「子どもたちの命や子宮を守るために」

まず、自身も子宮頸がんで子宮を失った経験があり、今回の呼びかけ人となった参議院議員・三原じゅん子氏がこの組織を発足させる趣旨について説明した。

「私は10年以上、この問題に携わってきて、政治家になったきっかけもこのワクチンでした。そのワクチンがこの6年半、様々な検証は行われているにも関わらず積極的勧奨再開には至っていない。現状をこのまま放置するわけにはいきません」

「諸外国では9価ワクチンを使い、男子にも接種している中で、日本は遅れていることを考えると、子どもたちのために私たちが何をすべきなのか専門の先生方にお知恵をいただきたい」

「政治が何かを動かしていかなければ、子どもたちの命や子宮を守れないのではないかという危機感を覚えています。もう黙ってはいられない、待ってはいられないということで勉強会を始めるとともに、議員連盟を立ち上げる決意をした」

続いて、会長に就任した細田博之・衆院議員が挨拶をした。

細田氏はまず、HPV感染を防ぐワクチンの効果が証明され、世界中で使われていることを紹介した上で、

「ワクチン接種によって一定の割合で重篤な痛みや精神的な障害が出ていると強く言われる医師もおり、自民党の中でも原因を解明するまではワクチンを使用すべきではないという人もいる。副反応がワクチンのせいだという世論が形成されているのは事実」として、日本ではワクチンへの反対意見が根強くある課題を振り返った。

一方で、「子宮頸がんに年間1万人が罹患し、亡くなる方も2900人に達していることも事実。WHOからは日本だけがワクチンの空白地域になることは人類の健康にとっても問題であると言われている」と指摘し、こう呼びかけた。

「厚労省でも検討され、医師会でも学会でも研究は進んでいると思いますが、2019年になった今、猶予はならないのではないか。様々なご意見を関係者から伺って、国民世論を喚起して、子宮頸がんにかかる女性を少なくすることは大事だと思いますので、みなさんの真剣な議論をお願いしたい」

厚労省「子宮頸がん予防は重要な健康課題」

続いて、厚労省健康課長が、「若い子育て世代が多いということで、その点からも子宮頸がん予防は重要な健康課題であると考えています」として、HPVワクチンと子宮頸がん検診を柱として打ち出していることを示した。

その上で、積極的勧奨を差し控えた経緯を説明し、その後、厚労省研究班の調査で、接種していない人も多様な症状が確認されたことなど安全性を示す知見が示され、治療体制や補償制度も整備してきたことを説明したが、積極的勧奨を再開しない理由については触れなかった。

その後、一般社団法人「予防医療普及協会」を作って、HPVワクチンについて啓発活動をしている堀江貴文氏が、「すでにぼくたちのできることは終わりました。最後に必要なのは政治の決断しかないと思います」と話し、政治主導での積極的勧奨の再開を訴えた。


日本医師会「体調不良を訴える人にも十分な体制を」

さらに医師たちからも、積極的勧奨の再開を求める意見が出された。

予防接種推進専門協議会委員長の岩田敏氏は、「(ワクチンや対象者であることを)知らずに接種できないということが起きないようにすることが必要」とした上で、接種率が落ちているため、積極的勧奨の再開を待てずに独自に対象者に知らせる事業を始める自治体が出ていることを紹介した。

その上で、こう呼びかけた。

「アカデミアから科学的に裏付けられた情報の発信がされることが大事ですし、行政からも定期接種であることの情報提供、できれば個別通知で周知することが重要だと思います」

次に日本医師会常任理事の釜萢敏氏はまず、「日本医師会は我が国のHPVワクチンの接種率を早急に、大幅に引き上げなくてはいけないという大変強い危機感を持っております」と述べた。

シンポジウムでの啓発活動や、体調不良を起こした子どもを適切に診るための診療の手引き作成を行ってきたことを説明し、医療現場で丁寧に説明するためのツールを示しながら、新たな声明を出すための準備も進めていることを明かした。

一方、「国が積極的な勧奨を再開することを視野に入れる必要はある」としながらも、「それだけで簡単に問題は解決するものではない」と指摘。

「仮に今後接種率が上がったとしても接種後に体調不良を訴える方は一定数出ることは予想される。『ワクチンとの関係はどうだったのだろう』と常に悩まれることはしっかりと理解して対処しなければならない」と述べた。

そして、各県に相談窓口となる医療機関が設けられていることに触れながらも、「接種後に体調不良を起こされて受診した患者さんが十分満足できる体制なのかと振り返ると、まだまだ不十分だと思います。『気のせいだよ』『関係ないよ』と説明すると、受診した人は非常に傷つく。医療の対応は十分準備しないといけないし、体制はさらにしっかり拡充しなければいけない」と注文をつけた。

積極的勧奨の再開、9価ワクチンの早期承認、体調不良の診療と補償の整備

最後にこの勉強会を議員連盟に発展させ、今後も議論を続けていくことが確認された。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに、積極的勧奨の再開と共に、9価ワクチンの早期承認や、接種後に体調不良を起こした人への診療や補償の整備を提言することを目指すとしている。

最後に挨拶をした細田会長は、HPVワクチンによる体調不良を訴えている医師と面会し、その医師の働きかけで自民党内にもワクチンに反対という議員グループがあることに触れながらも、こう述べた。

「原因は突き止めなくてはいけませんが、そういう反応が出る可能性があっても公益との比較の問題でもある。反対論者を切り捨てるのではなくて、そういう不具合が出た人は2回目はやめるとか、遺伝子的に影響があるのかなど、研究を進めたらいい」

「(副反応が)100%ゼロであるという必要はない。我々は世論形成をしながら、反対論者に耳を傾けながら、しかしそれでも進める。なぜなら公益の大きさが違うから。しかし十分な配慮はしましょう。十分な研究はしましょう」

終了後の記者ブリーフィングで、薬害訴訟の原告団がこの議員連盟に反対を唱えていることを問われた三原氏はこう答えた。

「私は決して敵ではないと思っています。逆に言えば味方なんだよとお伝えしたい。みなさんが不十分だと思っていることを一緒に行動しようよと考えているのは私たち議連なんだと思っています」